猿投の森づくりの会・公式ブログ

猿投の森づくりの会は、公益社団法人 日本山岳会 東海支部内のグループです。愛知県瀬戸市と豊田市にまたがる猿投山の西麓の森で、森の保全や有効利用を目的に活動しています。

わいがや講座

【わいがや講座】再開第8回 講演「森の仕組み・森づくり・人工林の手入れについて」

日 時:2024年2月24日(土)13時30分~15時15分
天 候:晴れ
場 所:山口公民館
参加者:27名

 再開第8回「わいがや講座」は、森林・林業の専門家として、また自然観察会や自然保護活動などでご活躍の北岡明彦先生をお迎えし「森の仕組み・森づくり・人工林の手入れについて」と題して講演して頂いた。
 当日は定例作業日で、午後3時までの作業予定だったが、皆さんのご協力で作業は午前で切り上げ午後からの開催とし、一般の方にも開放したので多くの出席者があった。

 講義内容は、裸地から極相林になるまでの植生遷移や、雑木林や人工林についての話、また森林の持つ機能や役割をわかりやすく解説して頂き興味深く聞くことが出来た。質疑応答では、日頃我々が猿投の森で行う森林整備活動について活発なやり取りがあり、中には我々の考えと真逆の話もあったが自然を知り尽くした先生の話には説得力があった。
 もう少し講義を聞きたかったが、時間的制約で予定を15分余りオーバーして閉会した。20年後、50年後の猿投の森をどの様な森にするかを考える上で有意義な講座だった。

 北岡先生には、お忙しい中ありがとうございました。


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わいがや講座(段戸国有林生産現場の見学)

日 時:2023年12月11日(月)
天 候:晴れ
場 所:段戸国有林
参加者:6名

 今回の「わいがや講座」は段戸国有林生産現場の見学。天候にも恵まれ車2台で現地林道入口の駒ヶ原橋ゲートへ集合。ここからは愛知森林管理事務所Mさんの先導で現場に向かう。途中架線集材の現場で説明を受けた後、尾根上の広場へ到着。ここで双方のメンバー紹介と今日のスケジュールを確認。

 まず斜面中腹からの見学では、プロセッサが木を掴み、枝払い玉切り工程を瞬く間に片付けたのに驚かされる。次に作業道整備では、若い女性が重機を操縦し元気よく活躍する姿が目を引いた。また、沢から尾根上への集材では重機にワイヤーを張り伐採木を軽々と引き上げていた。この様な生産現場を請負業者社長の説明を受けながら見て回った。

 最後に林齢100年超の材に付けられる「段戸SAN」ブランドの生産現場で、切り出された材の品質や名前の由来などの説明を受け見学会を終えた。
 途中、質疑応答などで盛り上がり予定時間をかなりオーバーしたが、有意義な見学会だった。

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「わいがや講座」再開第6回 講演「気候変動と 自然環境保護・森づくり」

2023年9月16日(土)
天候 晴れ
参加者 22名

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 「わいがや講座」再開第6回は近畿大学農学部の松本光朗教授をお招きして、「気候変動と自然環境保護・森づくり」と題しての講演です。

 地球温暖化によると見られる、猛暑、大雨と洪水、大きな山火事などが世界各地で頻発しています。この気候変動が将来どのようになっていくのか、また森林がどのような役割を果たすことが出来るのか、などについてスライドと豊富な資料で分かりやすく解説して頂いた。
 この中では、森林が二酸化炭素の吸収と炭素の蓄積という地球温暖化抑制に大きな役割を果たしていること、そのためには森林を健全な状態で維持することが大切であることなどの講義があり、気候変動と森林との関わりがよく理解できた。

 講演前、松本教授を猿投の森へご案内した折、「OECM(自然共生サイト)への登録を視野に活動してもいいのではないか」とのご提案がありました。検討の余地ありかと思います。
 今回は、支部の方や他団体の方にも公開し受講して頂いた。

 自然共生サイト・・・民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域

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わいがや講座開催

「わいがや講座」再開第5 

日時2023520日(土)

場所:瀬戸市 山口公民館 1階会議室

参加者:13

テーマ:「東京大学生態水文学研究所 100年の歩み」

講師:梁瀬桐子様 

 まず、生態水文学研究所設立100周年記念ビデオ「森と水と共に歩んだ100年」を鑑賞。
 犬山市、瀬戸市へ演習林の設置、砂防対策の植林、量水堰での流量観測、学生への研究支援、市民向けイベントの開催など、活動開始から100年に亘る多様な研究成果が紹介され、この地域の山が緑豊かな山になった経緯が分かります。
 後半は、現在の生態水文学研究所の日常業務としてどのような活動をされているのか、お話して頂きました。生態水文学の研究の他に、量水堰のデータ取得、学生による砂出し作業、巡回路の補修、環境省モニター1000のコアサイトとしての調査、森の中に鳥の巣箱を設置し営巣状況を観察するなど色々な業務があることが分かりました。
 質疑応答では「猿投の森づくりの会として何かお手伝い出来ることはありませんか」と言う提案がWさんから出ましたが、地域連携という観点からも前向きに考えていいかと思います。

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「わいがや講座」再開第4回

日 時:2023211() 10:00~12:00
場 所:海上の森入口駐車スペース
参加者:10
目 的:山口ダム及び塚原第1号古墳の見学
   前日の雨とは打って変わり穏やかな晴天となり歩くには丁度よいコンディション。
   午前10時、Oさんの先導でかすかな踏み跡を頼りに森の中へ。川の水音が次第に大きくなり、突然樹間の向こうに大きな構造物が現れる。今は役目を終えた山口ダムである。まずダム天端に上がると、巻上機やバルブ等の機器がそのまま放置されている。上流側では土砂が堆積しそこに大きくなった木々が林を作り、かってのダム湖の面影はない。下流側の河原から見上げるダムは迫力があり圧倒される。この多目的ダムが建設された経緯を考えると、この地域の人々の生活環境の改善に大きく貢献したものと思います。

山口ダム左岸より見た堤体1
               山口ダム                       左岸より見た堤体         

   次に、塚原第1号古墳歴史広場へ移動。塚原古墳群として多くの古墳が点在する場所で、まずよく整備された塚原1号墳と山口堰堤3号墳を見学。

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                塚原第1号墳                        塚原第1号墳歴史広場

   次の高塚山13号墳はそれぞれが雑木林の中の小高いピーク上に確認できたものの整備されていません。最後は移設前の塚原1号墳からの尾根筋にある2号、3号、6号墳を見学。中でも2号墳は1号墳に次ぐ規模で石室も立派なものの石積みの間から竹が生えるなど保存状態はよくない。この様に多くの遺跡がこの地域にあるのは、地形や自然環境等の諸条件に恵まれ人々の暮らしに適していたものと思われます。2時間の行程でしたが皆様のご協力でほぼ予定通りに終えることが出来ました。

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 高塚山3号墳                     塚原第2号墳     
高塚山3号墳1
高塚山3号墳







「わいがや講座」再開第3回

日 時:20221210() 9:30~15:30
場 所:ボイラー見学 犬山市塔野地北2丁目8 「今井あんきの家」
    間伐現場 犬山市字今井畑ヶ平
参加者:15名 (男性11名 女性4名)

目 的:木質ボイラー見学と「今井森林愛護会」との間伐交流を通して間伐材利用の現状を見聞する。

 好天に恵まれ、「中島池ビオトープ」駐車場から4台の車に分乗しボイラー見学へ。ここに設置してあるドイツ製ボイラーは、1mの間伐材20~25本で約3,000ℓのお湯を供給す能力があり、参加者からは次々に質問が出る。ボイラーの効率的稼働には薪材の安定供給が不可欠だと感じる。
 次に各自の車で間伐作業現場へ移動。朝礼後、標高差約40mの小山の上に登り3班に分かれ作業開始。時刻は既に11時を回っている。
 林内は低木(ツバキ等)、枯木が多くその処理をしながらの伐倒作業となる。人工林グループ長Gさんの指示で樹高を測るため胸高直径18cmの樹を倒し実測すると21mあり、先方からの提供資料(15m)とは違っている。超過密林(Sr 9,8)ということ。
 昼食は下の広場で温かい豚汁の振る舞いを受けながら、笑談も弾み楽しい一時でした。
 午後からの作業は、掛り木が出るなど苦労もあったものの全員の頑張りで予定通りに終了。
 お疲れ様でした。 

 今回の「わいがや講座」は犬山で他団体との間伐交流ということで時間的に厳しいスケジュールでしたが多くの方に参加して頂き、また「本日の振返り」では木質ボイラーへの関心の高さや間伐に対する意識変化の意見が出るなどある程度目的を達成したかと思います。この機会を提供して頂いた「今井森林愛護会」の皆様には、受け入れ体制もしっかり整えて頂き感謝です。

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朝礼
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    昼食           間伐前の現場



第36回わいがや講座

日 時:2018年10月2日(火)15:30---15:30
場 所:尾張旭市新池交流館「ふらっと」
参加者:6名 
テーマ :「猿投の森」整備基本計画書について
講   師 :  副代表  和田  豊司  様

   来年度から第6次協定がスタートするにあたり、整備基本計画を勉強しようということでこの講座が開かれました。初めて基本計画について説明を聞くことができ、これに込められた当時の情熱というのを感じることができました。またわかりやすくポイントを説明していだだきありがとうございました。
 平成22年10月に作成された「猿投の森」整備基本計画について、パワーポイントの資料を元に説明がありましたが、その一部について紹介します。 
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◎基本計画書を策定した経緯
 県有林の手入れについて指針もしくは方針のない中、知識や経験のある方を中心に整備基本計画は策定された。
1.地域の概要
  ・森林の木材生産機能 
 ・水源涵養・山地災害防止・生活環境保全・保健文化各機能 
2.猿投の森の現況
    ・松枯れでマツの立ち木密度は減少 52ha→ほぼ0
    ・植生が豊かで生物多様性に富んでいる  樹種214 
3.望まれる整備・活用方法
(1)猿投の森の特徴
 ・名古屋・瀬戸市街から近距離
 ・車でのアクセス良好 公共交通機関から遠い  
(2)森の活用
 ・健康作り・憩いの場・リフレッシュの場にする
 ・生物多様性・森林機能に関する研究・教育の場にする
 ・歴史資産・文化資産についての教育の場を提供
 ・森の恵み(生態制サービス)を享受する
(3)森林機能の向上
 ・生物多様性のある森林の育成と保全
 ・希少動植物の保護・再生の整備
 ・水場環境の整備
 ・優良材(スギ、ヒノキ)の育成
 ・林地保全・植生の復元・育成とその遷移観察
4.猿投の森整備の基本方針
(1)森林の活用
   項目ごとに何を行うか作業内容を記述 (表割愛)
(2)森林機能向上のための整備
   項目ごとに何を行うか作業内容を記述 (表割愛)  
5.地区別整備・活用方法
(表割愛)
6.今後解決しなければならない課題
 ・駐車場の整備
 ・トイレの設置
 ・野外活動施設
 ・優良材育成における県との調整
 ・他の森の利用者との協調
 ・県民、他の森作り団体との協調
 7.地図
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◎現在(2018-10月)でのミスマッチ
 ・活動範囲が広がっている
   東大赤津研究林、JAC所有地
 ・会員の年齢構成が高くなった
 ・財政基盤が整ってきた
   林務道具が整い、民家賃借により活動拠点ができた
 ・自前の森ができた
   利活用での制限が少なくなった

◎今後の方向性
 ・会員減少と高齢化に合わせる
   活動エリアの縮小化
   土木作業の中止(林道保全)・委託化
   人工林間伐作業(東大演習林も含めて)の縮小化
   環境保全・観察活動の強化
 ・会員増加策
   ???
 ・森の遷移に合わせた重点活動施策の見直し
 ・整備基本計画の改定 今年度中に策定 

※ その後意見交換を行いました。

わいがや講座

日 時: 2018年3月6日(火)(晴れ)
場 所: 尾張旭市新池交流館・ふらっと
参加者: 13名
演 題: 天空の花園を行く
講 師: 猿投の森づくりの会代表 小川 務 様

モンゴルのハンガイ山脈Noyan---Haton峰縦走登山
とテルヒール・ツァガーン湖のトレッキング

日時:2016年6月29日〜7月7日(10日間)
スケジュール
1日目:中部国際空港発、韓国インチョン経由ウランバートル着
2日目:ウランバートル、オギー湖、高山植物群生地でキャンプ
3日目:ツェツェレグ、テルヒーン・ツァガーン湖、ノヨンハンガイ国立公園、ノヨンBC(温泉あり)
4日目:Noyon峰(3163m)・・・Haton峰(3100m)縦走登山
5日目:2953m峰等でのフラワートレッキング
6日目:テルヒーン・ツァガーン湖、Khorgo火山登山、ツーリスト・ゲル
7日目:ツェツェレグ(アルハンガイ県立博物館)、オギー湖ツーリスト・ゲル
8日目:ウランバートル(さよならパーティー、民族舞踊、ホーミー・馬頭琴演奏等)
9日目:市内観光(ボクドハーン宮殿博物館、ガンダン寺)、ウランバートル空港発
10日目:韓国インチョン経由中部国際空港着

話の要点は以下のとおりです。

モンゴル国旗のデザインの意味についてクイズ形式での説明があった。
赤と青で三分割され、左の赤い部分にソヨンボという模様がデザインされている。その模様は上から、炎、太陽と月、槍を象徴する逆三角形などの図形で出来ている。

モンゴルの地理的説明があった。
北はロシア、南は中国に接している。西側からアルタイ山脈、ハンガイ山脈、ウランバートルの北側ヘンティ山地が連なり、北側にフブスグル湖がある。南側は乾燥地帯でゴビ砂漠では恐竜の化石が発掘されている。

雨は降ってもなんとかなるほどの雨、登山に適するのは6〜10月、
高山植物を楽しみたい場合は6/中〜7/中が良い。高山植物を見るにはコツがある。水平移動すると同時に1000m位の上下移動すると数多くの高山植物を堪能することができる。
モンゴルは火山国。フブスグル湖周辺には貴重なチョウが残っているなどなど・・・。

説明のあと、モンゴルの素晴らしい音楽をバックにしたスライドショーが約40分上映された。編集と音楽の選曲、DVD作成は当会のOさん、写真提供はAさんその他とのことでした。
モンゴルの大草原、放牧風景、お花畑の中の散策風景、多数の美しい高山植物、登山風景などが民族音楽とともに次々映し出され、ぜひ行って観たいな〜、もう一度行って観たいな〜と思わせるひと時でした。
モンゴル国旗
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わいがや講座

日 時: 2018年2月6日(火)
場 所: 尾張旭市新池交流館・ふらっと
参加者: 14名
演 題: GIS(地理情報システム)を活用した人工林の管理
      ー人工林の伐採計画ー
講 師: 東京大学 講師(生態水文学研究所所長) 広嶋 卓也 先生

講義の概略は以下の通りです。
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 日本の林業を取り巻く状況は厳しく、価格は下げ止まり、労働者も高齢化し、地形的にも急峻で木材を運び出すのに非常に労力がかかる。伐採計画をGISを使った管理手段で労力をかけずに効率的に行なう実施例を紹介する。

1. GISの基本概念
 GISとは、Geographic Information Systemの略で地理情報システムの略で、地図情報とそれに関連づけられた文字情報とを合わせた空間データを総合的に処理する地理情報システム。 GISのデータの種類にはラスターデータとベクターデータがある。東大で使っているGISのソフトウエアは、ArcGIS Desktop。
(1)ラスターデータ
        • 格子状に並んだ画素の集合体で構成される図形データ。
        • 例えばデジタル航空写真、デジタル衛星写真、デジタル標高モデル
   等がある。

  <DEMとは>
        • ラスターデータの中で最も重要なものがDEM(デジタル標高モデル)
   で、Digital Elevation Modelの略。

        • 一個一個の格子点毎の位置と文字情報としての標高とを組み合わせ
   データである。

        • GISの作図機能を使って標高別に色分けして表示される。
(2)ベクターデータ
        • 点や線や多角形で表現されるデータ。位置座標が数学的に決められて
   いる。

        • 点のベクターデータとしてはGPSの軌跡の機能がある。
        • 線のベクターデータとしては道路、川、歩道等がある。
        • 多角形のベクターデータとしては林班、小班がある。
  <林班、小班とは>
        • 林班とは、尾根筋、谷筋、川等の自然の地形条件で区分される地域。
   千葉演習林は47林班で構成。
        • 小班とは、林班をさらに再分解したもの。千葉演習林には774の
   小班がある。

2.GISの解析機能
        • 文字情報ベースの検索(属性検索)と地図情報ベースの検索(空間
   検索)の2種類の検索機能がある。

3.DEMを利用した地形解析
        • 標高別に色分けした地図に、光と陰のレリーフで3次元のようにリ
    アルに表示できる。

        • GISの解析機能で、DEM上に引いた一本の直線に沿った縦断面をグラ
   フ表示できる。

4.千葉演習林での活用事例
 GIS解析機能を駆使した森林管理の事例
 (
伐採の適地を自動的に選定する事例)
(1)千葉演習林
千葉演習林は、房総半島にあり標高は低いが複雑で険しい。照葉樹林帯で常緑樹が主体の森林。天然林は針葉樹天然林(モミ、ツガ)と広葉樹天然林(シイ、カシ)。人工林はスギ(60%)、ヒノキ(30%)、面積で40%を占める。
(2)GISの道具
        • ディファレンシャルGPS(高精度のGPS)、レーザーコンパス、
   PDA(携帯コンピュータ)、反射板。

        • ディファレンシャルGPSで正確な位置を決め、そこを起点に距離
   と方角のコンパス測量をしていく 。

(3)GISによる皆伐更新適地の選定
        • GISのデータと解析機能を使って、2013~の5年間の人工林伐採適
   地を効率的、自動的に選定する。

(4)GISの主題図を利用
        • 地位、地利、崩壊危険度の視点から伐採適地を評価した主題図を作
   り、
最終的にそれらを合体させ色々な視点から総合的に見て伐採に
   適し
た場所を自動的に選ぶための地図を作成する。
5.解析に使うGISデータの紹介
 人工林は同じ樹齢の木で小班ができているが、同じタイミングで植えた木同士が競争し、負けたものは間伐の対象となる。競争に勝ったものは優勢木で間伐の対象にならない。空からはその上層木の樹冠が見える。
<地位>
        • 地位はその地域に生える木の成長の良し悪しを表す概念である。
   地が肥えているという概念とは違う。

        • 同じ樹種で同じ樹齢の場合、地位の良いところに生えているスギの
   方が樹高が高い。

        • 地位は上層木樹高で判断する。
6.LiDARによる位置と高さの取得
        • 地位を判定するために上層木の位置と樹高のデータをLiDARで取得
   する。

        • LiDARはレーザー照射機とGPSなどの位置情報を捉えるセンサーと
   を積んでいる。

        • 航空機が飛びながらレーザーを地上に向かって照射し続け、地表の
   何かに当たって跳ね返ったレーザーを読み取る。

        • LiDARによって、樹冠表面の凸凹を捉えたデータと地面の表面の凹
   凸を捉えたデータ
が得られる。
        • 樹冠表面と地面表面それぞれの高さの差を取ることで樹高がわかる
        • 上層木の位置と樹高は自動的に得られる。
        • 本件ではわずか3つの人工林小班で測定し、687本のスギの樹冠
   の位置と樹高のデータを得た。

7.GIS解析手順
  皆伐更新適地の選定手順
 LiDARデータとGISの解析機能を使って千葉演習林全体(774小班)の地位を間接的に推定する。
  (1)林齢の観点から伐採適地を選ぶ・・・高齢であればあるほど立
     派な木。

  (2)地位の観点から伐採適地を選ぶ・・・収穫材積の目安。
  (3)地利の観点から伐採適地を選ぶ・・・集材可能性の目安。
  (4)斜面の安定度の観点から伐採適地を選ぶ・・・再造林後の成材
     可能性の目安。

  (5)上記4つの観点それぞれの主題図を結合し総合的に見て伐採に
     適し
た小班を選ぶ。
  (6)だめ押しで、選んだ候補地が本当に架線集材が可能かチェック
     しベスト5を選ぶ

7−1.林齢
千葉演習林では樹齢80年を過ぎた人工林だけが伐採対象で、特定の林齢以上の小班を自動抽出する。
7−2.地位
地位は上層木の樹高が高いほど高くなる。
異なる林齢のスギを成長曲線に一個一個当てはめて687本全て樹高を40年スギに換算して比べる。
傾斜角、斜面の方位、曲率(尾根、谷、平地)、日射量、累積流量の地形因子の組み合わせでスギの上層木樹高を説明できる関数式を使い千葉演習林の全域の上層木樹高を間接的に計算する。
7−3.地利
地利は集材の可能性の目安になる。土場に近ければ近いほどその森林は伐採に適している。
7−4.斜面安定度
斜面安定度を計算するための計算式がある。数字が大きいほど斜面が安定し伐採後の再造林に適している。
7−5.観点の結合
4つの観点から伐採適地を算定するためそれぞれ主題図を作成後、5番目のステップとして、林齢、地位、地利、斜面の安定度を総合的に結合した伐採適地の評価地図を作り、4つの観点いずれから見ても総合的に伐採地に適している場所を選ぶ。
7−6.可視性から見た伐採適地の選定
だめ押しのステップとして、選んだ小班の一個一個について、本当に架線集材を実施できるか、土場から見て見通せる尾根と土場に絞った。
8.おわりに
4つの小班を選定するまで1人でパソコン上の画面だけでできた。
千葉演習林で樹齢80年以上の高齢人工林を対象に地位・地利・斜面安定度・可視性の観点から今後5年間の伐採適地をGISを使って自動選定した。 森林管理にGISを活用することにより人件費、作業時間を削減できる。
本レポートの作成にあたっては記載内容に間違いのないように十分注意を払っていますが、筆者の理解不足等により間違いがあるかもしれません。その点ご理解よろしくお願い致します。)

わいがや講座

平成29年12月5日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 6名

テーマ:「森の雑談」
講 師:加藤 明 氏

1.第9回森の音楽祭2017アンケート調査結果−まとめ
        アンケート結果の説明と意見交換がありました。
2.2017年 法人会員デーのアンケート集計
        アンケート結果の説明と意見交換がありました。
3.林野庁の環境林整備事業について、「主な支援対象作業」等の説明と意見交換がありました。
4.森林環境税について説明と意見交換がありました。
5.京都市の「花背の三本杉」の1本が高さ日本一の62.3mであることが確認され、鳳来寺の傘杉(59.6m)を上回ったとの新聞記事の紹介がありました。
6.「森づくり活動についての実態調査 平成24年調査集計結果」(林野庁)の説明と意見交換がありました。

わいがや講座

平成29年11月7日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 10名

テーマ:「葉で動物を作ろう」
講 師:竹田 義彦 氏

シュロの葉でバッタを作るのに挑戦しました。みなさん最初は苦労していましたが、何度と手取り足取り教えてもらい、本物そっくりだと自賛しながらバッタを作っていました。ひとりで何個も作る人もいて楽しい半日でした。

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わいがや講座

平成29年10月3日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 7名

テーマ:「イベントの打合せ・確認」

「森の音楽祭」及び「法人会員デー」について打ち合わせを行いました。

1.第9回森の音楽祭2017
        実施日 2017年10月28日(土)
 (1)進行表(案)
 (2)参加予定者(10月2日現在)
 (3)作業分担表(案)

2.29年度 法人会員デー 運営計画(案)
        実施日 2017年11月25日(土)
 (1)対象法人
 (2)開催場所
 (3)スケジュール
 (4)運営スタッフ・担当業務

わいがや講座

平成29年9月5日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 15名
テーマ:「猿投山の動物」
講 師:猿投の森づくりの会員・日本山岳会東海支部自然保護委員 南川 陸夫 様
講義内容
概要
1、猿投の森づくりの会発足当時の森づくり活動について、勉強会、森づくりの方針、作業内容(巻き枯らし、水質調査、森の観察会、森の音楽祭)、ギフチョウの観察等の説明があった。
2、森づくりの活動のときに動物の糞を見つけた。その後森林総合研究所大井先生によるとカモシカの糞と確認してもらった。これをキッカケとして動物の調査をすることとなった。2012年、23名で山路の森を14区画に分け赤外線カメラ4台を使い調査を開始した。
3、その結果、カモシカ、イノシシ、ノウサギ、アライグマ、リス、キツネ、タヌキ、ハクビシンが確認できた。それら頭数の割合を表にして説明があった。
4、定点カメラで捉えた動物の写真の説明があった。カモシカの摂餌中、イノシシの親子、イノシシのヌタ場での連続写真、等々。
5、2012.4.6~2013.4.5の1年間で延べ505頭カウントできた。実数はこの数値の何パーセントか?
6、2013年ニホンシカが出現した。2014年にはペアで出現した。2017年1月、6頭カウントした。
7、近年イノシシ、アライグマ、カモシカが増加している。サワガニが減少しているのはそのためではないか?(今夏、溝さらいをしたときにはサワガニを複数発見できたとの意見があった)
8、現在三箇所に定点カメラを設置して継続調査をしている。
9、その他具体的に詳しい説明があった。

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わいがや講座

2017年8月1日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 7名
テーマ:「あいち森と緑づくり税を活用した取組
 〜山から街まで緑豊かな愛知をめざして〜」
講 師:
        愛知県農林水産部農林基盤局
  森林保全課 森と緑づくり推進室 森林里山再生グループ

        主任主査 福井 久敏 様
        技師   佐藤  博文 様
配布資料
1.(冊子)あいち森と緑づくり事業 8P
2.(冊子)あいち森と緑づくり事例報告 8P
3.(パワーポイント資料) 15P
4.「県政お届け講座」を御活用ください!
5.アンケート

パワーポイントを使った講義の後活発な質疑応答があった。
当会の県有林、東大演習林での森づくりは、「あいち森と緑づくり事業」が対象とする森林に該当しない。
当会の活動について、助成金等に関する質問・要望事項については後日回答を頂くことになった。

=講義内容=
A 森と緑のはたらき
        環境の保全、水源のかん養、防災性の向上、良好な景観の形成、
  保健休養の場の提供、生物多様性の保全
B 森林の働き(多面的機能)
        1.森林の経済的機能・・・木材等を供給する
        2.森林の公益的機能
                ・水源をかん養する
                ・土砂災害を防ぐ
                ・地球温暖化を防止する
                ・生活環境を守る
                ・自然環境を守る
                ・保健休養の場を提供する
C あいちの森林・林業の現状
        1.県土の4割が森林
        2.人工林の割合が高い
        3.森林資源は充実
        4.人工林は手入れが必要
D あいちのめざす森林の姿
        単層林や針広混交林などの多様な森林が混在し、
  多面的機能を発揮している状態
        1.積極的な林業活動が行われている森林
        2.自然の力を活かして育まれている森林
        3.身近な里山林として活用されている森林
E めざす森林への取り組み
        1.自然の力を活かした森林の森づくりの推進
        公益的機能の発揮、多様な森林に誘導、災害に強い森林づくり
        2.都市や集落に近い里山林づくりの推進
        森林所有者、地域住民、ボランティアなどの連携、ネットワーク等
F あいちの森と緑づくり税の導入
        ・H21年度「あいちの森と緑づくり税」導入
        (個人)県民税に500円を加算、(法人)均等割額の5%を加算
        ・愛知県→あいち森と緑づくり基金→あいち森と緑づくり事業→
        ・人工林、里山林、都市の緑を整備・保全

G 森と緑の現状
        森林・里山林の手入れ不足、都市の緑の減少
        里山林は放置される森林や竹林が増加

<あいち森と緑づくり事業の概要>
I 森林(人工林)の整備(間伐の実施、技術者の養成等)
        1.対象とする森林
                ・林道から遠く離れた森林、公道・河川沿いの森林等
                (公有林、保安林を除く)
        2.事業内容
                ・強度間伐(原則40%以上)、間伐材の整理その他
        3.協定の締結
                20年間、皆伐禁止、転用禁止等
J 里山林の保全・活用(放置された里山林の整備)
        1.里山林再生整備事業(県営)
        2.身近な里山林整備事業(市町村営)
K 都市の緑の保全・創出
        1.身近な緑づくり
        2.緑の街並み推進
        3.並木道再生
        4.県民参加緑づくり
L 森と緑づくりにつながる取り組み
        1.環境活動・環境学習への支援
        2.県産木材の活用

<森林整備事業>
        a 人工林の整備の実施例の紹介
        b 里山林の整備の実施例の紹介

<都市緑化推進事業(建設部)>
        a 身近な緑づくり
        b 緑の街並み推進
        c 美しい並木道再生
        d 県民参加緑づくり

<環境活動・学習推進事業(環境部)>
        a 森や緑の育成活動
        b 森や緑の環境学習
        c 独自提案

<事業推進>
        a 森林整備技術者の養成
        b 普及啓発事業

わいがや講座

2017年7月4日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 10名
テーマ:「自然観察から見た猿投山」
講 師:竹田 義彦 様

講義の概要

1.自然観察会の推移
 山路の森で自然観察会を始めてから6年が経ち7年目に入った。当初は2〜3名の参加者であったが、今では15〜20名程の参加者があり月1回の会として成り立っている。

2.当初はたくさんの種類が観察できたが最近極端に減少しているものがある。山路の森で今までに観察された山野草はリスト(174種類)のとおりであるが、そのうち特に次のものが少なくなっている。
ミズタマソウ、イチャクソウ、オオバウマノスズクサ(ジャコウアゲハの食草)、オトコエシ、ツルニンジン、センニンソウ、アキノキリンソウ、シユウブンソウ、ワレモコウ、オオヒキヨモギ(絶えた?)、アキチョウジ、シマジタムラソウ、カキドオシ、ゲンノショウコ(赤花)、マツカゼソウ、ササユリ、ミヤマナルコユリ、ホウチャクソウ、トリアシショウマ、シュンラン、オオバノトンボソウ、フデリンドウ、アケボノソウ、カキノハグサ、ヒメハギ
3.減少の原因として、人間の活動によって多くがなくなっている。
下草刈りは時期を見て行うのが良い。きれいに刈り過ぎるといっぺんになくなる。
4.山野草は生態系の中で大事な役目をしている。

5.鳥は34種類が観察された。その他チョウ、トンボ、ヘビ、カモシカ、タヌキ等が観察されている。

6.猿投の森の古窯について、その歴史、地理、種類等について説明があった。
 黄瀬戸、志野、織部、瀬戸黒などの桃山期の焼き物の多くを産み出したのは瀬戸ではなく美濃が中心であった。
 名古屋考古学研究室によって瀬戸古窯の分布、発掘調査が行われた。その分布図の説明があった。
7.猿投山の地質・花崗岩について説明があった。
 猿投山の地質は中世代白亜紀の末期に形成された花崗岩が基礎になっている。猿投山北断層を境として南側の伊奈川花崗岩、北側の苗木花崗岩に分かれる。他に猿投山には球状花崗岩がある。
 東山路地区では林道に沿って断層が通っている。

 意見交換のときに、山野草の存在する場所の調査を行ったらどうかとの提案があった。

IMG_0938170704わいがや講座

わいがや講座

2017年6月6日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 5名
テーマ:「29年度活動方針」
講 師:加藤  明  作業委員長

講義の内容
1、総会で承認された「平成29年度活動計画」及び「2017年 年間活動計画」に基づき説明及び意見交換があった。
2、「なごや環境大学共育講座の募集要項」に基づき説明及び意見交換があった。(1月〜3月参加予定)
3、「環境デーなごや2017中央行事へのご出展について」説明及び意見交換があった。
        日時は平成29年9月16日(土)午前10時〜午後4時
4、名古屋工業大学 増田理子氏の紹介があった。
5、山桜フィールドでの活動について、その方針等について意見交換した。
6、人工林Gのブログへの今後の活動結果報告内容ついて意見交換した
7、チェーンソーアートについて意見交換した。
8、山岳会東海支部との協働作業について意見交換した。
9、照度計の利用について意見交換した。
10、コナラの植栽について意見交換した。

わいがや講座6月以降予定

わいがや講座予定6 (2)
開始時間は、13:30からです。

わいがや講座

2017年4月4日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 6名
テーマ:「炭の力」
講 師:加藤  明  作業委員長

講義の内容

「炭の力」として主に以下の説明がありました。初めて聞く内容も多々あり大変勉強になりました。
炭とは
炭とは、原料の木から煙だけを取り去ったもの。小さな穴が無数に空いている。
炭の構造
杉炭の断面は四角孔、檜炭は六角形の蜂の巣の構造になっている。
炭の性質
木の種類によって炭の性質が異なる。針葉樹は炭の内部の壁が薄く穴が多い。広葉樹に比べ表面積が約1.5倍大きい。広葉樹は炭の内部の壁が厚く、針葉樹に比べ強度がある。
白炭と黒炭
白炭は、炭化が終わるころ窓口を開け空気を窯の中に大量に入れ、窯の中の温度が一気に上昇、1,000度以上になったあと頃合いを見て炭を取り出し灰をかけて消火する。黒炭は、炭化が終わった段階で窯を密閉し空気の流入を止め消火する。冷えたあと取り出す。
白炭は皮がついていないが黒炭はついている。叩くと白炭は高い音、黒炭は鈍い音がする。白炭は火付きは悪いが火持ちがいい。黒炭は火付きは良いが火持ちが短い。
        備長炭
備長炭は白炭で炭素の純度が高い。煙が発生しにくく店舗内での炭火焼などに重宝される。昔は「和歌山県産でウバメガシを原料にしたもの」と言われていた。ノコギリでは切れず 鉈(なた)を用いる。
環境に優しい「竹炭」
竹炭は孟宗竹で作る炭で、木炭と比べ吸着力が高く、ミネラル成分が多い。脱臭や土壌改良剤として使われる。
オガ炭
製材時に発生するオガクズを圧縮成形した「オガテック」を原料とした木炭で、火持ちの良いオガ炭の白炭は焼肉店などで利用される。
炭の4つの働き
1吸着力  2調湿作用  3還元作用  4触媒作用
炭で焼くと、何故美味しく焼けるか。
赤外線(近赤外線、遠赤外線)の効果。赤外線は熱として食品に吸収されやすく、タンパク質を分解してグルタミン酸を生成する。

このあと「長久手まちセンまつり」の参加報告がありました。
IMG_0818 わいがや
 

わいがや講座

2017年3月7日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 8名
テーマ:「樹木医として循環活動を目指して」
講 師:    愛日緑化造園代表取締役 加藤 滋 様

講義の内容
主に瀬戸市近郊の森について話がありました。大変勉強になりました。

1.加藤講師は、名古屋大学農学部で森林生態学を学ばれ、樹木医の資格を始め一級造園施工管理技士、一級土木施工管理技士の資格を持たれている。
会社では、自然本来の魅力にあふれた山採りの木を使って庭づくりを行うことで、ジャングル化した森を再生へとつなげ、「庭づくりから森の再生へ」の循環を生み出しておられる。一方、瀬戸市を中心に24カ所での森ツアーを開催しておられる。

2.瀬戸市の森
(1) 瀬戸市にはマメナシ(東松山町)とマルバタラヨウ(中水野町)の天然記念物指定木がある。
(2) 瀬戸市の森は世界一の多様性を持った森である。
・先進国の中で森林率の高い国は、フィンランド、スエーデンに次いで日本は3番目である。
・かって日本は99%が森であった。
・現在日本には諸説あるが1200種の樹木がある。
・瀬戸市には約350種がある。東大演習林には約300種がある。
・瀬戸市の森の面積は約63㎢である。単位面積当たりの種の数は、350/63=5.6種/㎢
・アマゾンは、木の種類は16,000種、面積が700万㎢、単位面積当たりの種の数は、0.002種/㎢
・屋久島は、木の種類は900種、面積が500㎢、単位面積当たりの種の数は、1.8種/㎢
森の単位面積当たりの樹木の種類を比べると瀬戸市はダントツに大きい。

3.瀬戸市の森の秘密
(1)粘土質の地層
粘土層の上に砂礫層が重なってある。地層の隆起で上側に湾曲すると、雨水は流れ乾燥地帯となる。逆に下側に湾曲すると粘土層の上に水が溜まり湿地帯となる。
モンゴリナラはこの乾燥地帯に生育し、土壌が貧弱で砂礫層が地表に迫っている場所で、根を真っ直ぐに伸ばすことができず斜めに這わせる能力を持っている。
(2)日本の真ん中にある
南側からの常緑広葉樹と北側からの落葉広葉樹、針葉樹の両方が生存しているので種類が多い。
(3)禿山だった
禿山過ぎて大部分が人工林にすることができなかった。
(4)原生林がある
定光寺北斜面に原生林があり、原生林特有の木がある。

5.その他、植物連鎖、輸入材による木材価格の下落、木材自給率の低下、燃料革命、拡大造林や、森のツアーの説明があった。

わいがや講座

2017年2月7日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 14名
テーマ:「外来種」
講 師: 愛知県自然環境課 野生生物・鳥獣グループ
  主査 小川 敏幸 様

講義の内容
外来種について主に下記について話がありました。大変勉強になりました。
IMG_0333
1. 生物の多様性とは
1)種の多様性
2)生態系の多様性
3)遺伝子(種内)の多様性
2. 4つの危機
第1の危機 人間の開発、乱獲(日本産トキの絶滅)
第2の危機 里地里山の管理不足(ギフチョウ減少、鹿増加、竹林拡大)
第3の危機 外来種による在来種への影響(下記参照)、化学物質(農薬)
第4の危機 地球温暖化による環境悪化(ホッキョクグマ)

-------------ここから本題--------------
3. 外来種とは
  もともとその地域にいなかった生物で人間によって持ち込まれたも
カブトムシ(北海道にはもともといなかった)、カミツキガメ・・
4. 日本から外国へ持ち込まれた外来種
クズ(北アメリカ)、イタドリ(イギリス)、ワカメ(オーストラリア)
5. 外来種の及ぼす悪影響
1)日本固有種の生態系への影響
在来生物を食べる、在来生物と交雑し雑種をつくる、日陰にする
2)ひとの生命・身体への影響
3)農林水産業への影響・・・農作物を食い荒らす、畑を踏み荒す
6. 侵略的外来種とは
その種が自然の生息域外に導入、拡散することが生物多様性への脅威となる種。
7.特定外来生物とは(外来生物法)
もともと日本にいなかった外来生物のうち、生態系などに被害を及ぼすもの。
飼育・栽培・保管・運搬・販売・譲渡、輸入の原則禁止。
(哺乳類) アライグマ、ヌートリア等
(魚類)カダヤシ(メダカを絶滅させる)、オオクチバス(ブラックバス)等
(爬虫類)カミツキガメ等
(クモ類) セアカゴケグモ 等
(植物) ボタンウキクサ等

8.愛知県「自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例」
あいちの外来種・・・移入種対策ハンドブック
外来種被害防止3原則:外来種を「入れない・捨てない・拡げない」
IMG_0332
県内の生態系に著しく悪影響を及ぼすおそれのある移入種29種>
(淡水域の移入種)
アカミミガメ、ワニガメ、コブハクチョウ、オヤニラミ(もともと西日本には生息しているが西日本では絶滅危惧種、愛知県では外来種)、ナイルティラピア、カラドジョウ、スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)、スイレン、ハゴロモモ(カボンバ)、ハビコリハコベ(グロッソスティグマ)、ナガバオモダカ、キショウブ
(沿岸域の移入種)
チチュウカイミドリガニ、タテジマフジツボ、サキグロタマツメタ、ホンビノスガイ、アツバキミガヨラン、ウチワサボテン、ヒガタアシ
(陸域の移入種)
ハクビシン、パラワンオオヒラタクワガタ(在来種との雑種をつくる)、タイワンタケクマバチ、ホソオチョウ、アカボシゴマダラ、トウネズミモチ、タカネマツムシソウ、ポンンポンアザミ、ノハカタカラクサ、モウソウチク

9.愛知県のその他の外来種
(クサガメ、ニホンイシガメ、スッポン、アカウミガメは日本在来種)
カミツキガメ、ワニガメ、アカミミガメ(小さい時はミドリガメ)
オオキンケイギク(引き抜いて駆除)

10.今後要注意の外来種
アルゼンチンアリ(2mm)、クビアカツヤカミキリ、オオクビキレガイ(畑)、メリケントキンソウ(芝生に生える)、ウチワサボテン、ツマアカスズメバチ(九州)、アリゲーター・ガー(魚)

11.その他
コイの放流(日本の固有種は琵琶湖にしか生育していないと考えられている)
ホタルの放流(他地域からの持ち込みはNG。ゲンジボタルの点滅:東日本4秒、西日本2秒)
ハリエンジュ(ニセアカシヤ)(禿山から森への復元のため土壌改良目的で植えられた)
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次回予定 3月7日(火)  1:30〜3:30  
テーマ:樹木医として循環活動を目指して
講 師:愛日緑化造園代表取締役 加藤 滋 様
場 所:尾張旭市 新池交流館ふらっと

第19回わいがや講座

2016年12月6日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 24名+講師
テーマ:「瀬戸の植生と、これからの森づくり
講 師:            とよた森林学校主任講師    北岡 明彦 様

講義の内容
(レジュメから)
Ⅰ 瀬戸の潜在自然植生
 ·   潜在自然植生は標高によって異なる。
 ·       概ね標高300m以下・・・シイーカシ林
 ·       概ね標高300m以上・・・モミーカシ林
 潜在自然林はどこでわかる
 ·       神社仏閣の森(鎮守の森)は長い間皆伐されることがないため、その地域本来の森林の姿(極相林)を垣間見ることができる。
(例)定光寺、雲興寺、猿投神社東の宮など
Ⅲ 瀬戸の現植生
 1   瀬戸市〜東濃地方にかけては「日本三大ハゲ山地帯」の一つとされ、明治時代には広大なハゲ山が広がっていた。明治時代以降、多くの経費と時間をかけて植林活動を続けた結果、現代では緑が回復した。

 2        瀬戸市の地質は庄内川沿いの中生代チャートとそれ以外の地域の花崗岩に大別され、植生も大きく異なる。
 3        花崗岩地帯(風化土は貧栄養で固着性が低く水はけが良すぎるのが特徴)では平安時代から焼き物の産地として森林の過剰利用が続き、ハゲ山が広がった。
 4        ハゲ山地帯の沢沿いには東海地方固有湿地が発達し、そこにはシデコブシやシラタマホシクサなどの東海丘陵要素植物が豊産することが注目される。
 5        潜在自然植生はシイーカシ林とモミーカシ林であるがほとんど消滅し、各地の鎮守の森でわずかに見られるに過ぎない。
 6        現植生はアカマツ林、コナラーアベマキ林、スギーヒノキ人工林が多く見られる。しかし、植生遷移の進行に伴い、アカマツ林はコナラーアベマキ林に、コナラーアベマキ林はシイーカシ林に順調に遷移しつつある。これは、植生遷移の終着点で原生林の姿でもある極相林に近づいている証拠である。

(講話のメモから・・・聞き間違いがあるかも知れません)

       矢作川の左岸と右岸とではカンアオイの種類が異なる。右岸はスズカカンアオイ、左岸はヒメカンアオイが分布している。アリにより種子が運ばれ優勢のスズカカンアオイがヒメカンアオイを淘汰してきたが矢作川を越えることができなかった。
 
        一本木を切ることは命を断つこと。自然への畏怖を思いながら手を加えること。
 
    本来の植生=潜在自然植生(原生林の姿)

         他の地域から持ってきて植えることは、やってはいけない。
 
   ツブラジイ〜ツクバネガシ林には、ヤブニッケイ、カラタチバナ、ヒイラギ、リンボク、タマミズキ、ムヨウランなどの随伴種が生育する。これらも含めた森林として考えることが重要。

   ヤマザクラの野生寿命100から150年。200年は生きない。ヤマザクラの実生苗はない。カスミザクラの実生苗は多い。

   豊田市の山地帯と丘陵地の植生遷移の模式図2枚を参考に、森の一生の説明があった。瀬戸の植生遷移はこれらの模式図の中間、両方の要素が重なる。

         森は800年かけて裸の状態から原生林までゆっくり動いている。森林の一生は800年、人間の一生は80年。森林を観察するには、人間の尺度ではなく、森林の尺度で眺める必要がある。

   コナラの実から育てるには皆伐する必要がある。(親木の下に実生苗は育たない)

    針広混交林は目指しているがまだ実現していない。2−3年ごとに30%ずつ切るか巻枯らし間伐する。

   ギフチョウは人間が森林を適切に利用することによって増えた。(薪炭林や原木林として利用させてもらってきた結果として、落葉広葉樹林が成立し、そこに多くの動植物が生きてきた。)

   ギフチョウの減少の一番の原因は採集(高値で売れる)である。
わいがや講座
 

   最後に小川代表から絶賛の声で締めくくりがありました。貴重な話をありがとうございました。模式図を念頭に今後勉強していきます。

     加藤委員長、企画ありがとうございました。

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次回予定 2月7日(火)  1:30〜3:30  

テーマ:外来種

講 師:小 川 様  (愛知県 環境課)

場 所:尾張旭市 新池交流館ふらっと

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第18回わいがや講座

2016年11月1日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 8名+講師
テーマ:「ギフチョウの現状
講 師:猿投の森づくりの会員・ かすがいギフチョウのすむ里山づくりの会 代表
     日本鱗翅学会 自然保護委員会東海支部長        高橋 匡司 氏
講義の内容
 ギフチョウの種類、分布域、生態、食性、置かれている環境、今後の取り組みなどについて、南山大学の江田教授の資料等を参考に詳しい説明がありました。
 日本にはヒメギフチョウとギフチョウの2種類のギフチョウがいて、本州中央部で東と西に棲み分けている。ヒメギフチョウは、日本以外にもロシアや朝鮮にも分布しているが、ギフチョウは日本だけに生育している。
 東海地方にはギフチョウが生息している。愛知県内では、尾張東部丘陵から豊田市にかけての地域と、岡崎から新城にかけての地域の二つの分布域に分けられる。生息地によって個体差があり、また食草が異なる。前者はスズカカンアオイを、後者はヒメカンアオイを食草としている。これらのカンアオイは毒素を持っていて、スズカカンアオイがヒメカンアオイよりも毒素が強い。ヒメカンアオイを食草としているギフチョウをスズカカンアオイの地域に持ってきても生存が困難である。
 ギフチョウは「春の女神」と言われ、またオオムラサキとともに「里山のシンボル」とも言われている。
 ギフチョウは、3月までは蛹で過ごし、4月になって成虫になり、スズカカンアオイの立ち上がっている新しい葉の裏側に8〜12個産卵する。時間が経つとスズカカンアオイの葉は水平に展開し伸長すると、卵は隠れた状態になり敵から身を守れる。1週間でふ化したあと幼虫は集団で過ごし、4回脱皮を繰り返し蛹になり冬を越す。蛹を見つけることは非常に困難である。
 ギフチョウは環境省のレッドデータブックに掲載されている絶滅危惧種である。愛知県では宅地造成による都市化、工業団地の進出、農薬散布などにより生育環境が悪化し激減している。海上の森での調査では、2001217頭、200285頭、200350頭、愛知万博後の2006年には3頭であった。愛知万博による開発は予定より狭まったがギフチョウの生息地は破壊された。また、人間が里山を必要としなくなったため、そこに適応していたギフチョウは住めなくなった。その結果20151頭、20160頭であった。
 成虫は、コバノミツバツツジ、スミレ、サクラなどの花を吸蜜する。
 猿投の森では現在生息が確認されていないが、食草であるスズカカンアオイが多数生育しており、コバノミツバツツジなど吸蜜源も豊富である。ギフチョウを呼び戻すためには下草刈りや間伐等により食草や吸蜜源が保存できる環境保全が必要である。ギフチョウの移動範囲はおおよそ1.5kmである。スズカカンアオイの生育を調査し地図にプロットするのもよい。
 今後の活動について活発な意見交換がされました。女性会員からは、今後もギフチョウの調査活動に参加したいという力強い発言がありました。ギフチョウの生態について色々と知ることができ大変勉強になりました。ありがとうございました。
 

 産卵中のギフチョウ
 ギフチョウ

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次回予定 12月6日(火)  1:30〜3:30  

テーマ:瀬戸の植生と森づくり

講 師:北岡 明彦 様

 豊田市役所 産業部森林課在職

場 所:尾張旭市 新池交流館ふらっと

第17回わいがや講座

2016年10月4日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 15名+講師
テーマ:「人生80年の体験談」
講 師:猿投の森づくりの会 H.S 氏
講義の内容
 配布された長文の資料『自然と調和した里山のくらし』に沿って、里山の事、太平洋戦争の事、戦後の経済発展と自然破壊、文明と自然との調和の課題、森林の過去、現在、未来、猿投の森づくりの進め方について話をしていただきました。2時間では語り尽くせないほどの内容の濃さで、最後の方では時間が不足し要点だけの話の部分もありました。
 前半は、「自然と調和した里山のくらし」子供の頃の里山での自然循環型の生活の話から始まり、辛い「太平洋戦争の思い出」、及び「戦後からの復興期」の「公害」、「プラスチック革命」、「エネルギー革命」、「バブル景気」と「バルブの崩壊」、更に「消えゆく都市近郊の森」、「生物の大量絶滅」、「石炭窯の普及」などの社会現象、社会問題、更に「尾張の山の退行遷移」、「森の復元」、拡大造林政策による「人工林」、及び「禿山からの回復・・・植生遷移の始まり」など、森林の変化、遷移に関する話がありました。
 後半は、「猿投の森へのこころづかい」、「植生遷移」、「猿投の森の広葉樹林の森づくりの目指す目的??」、さらに「猿投の森での魅力ある場所」についてなど、猿投の森づくりに関する話がありました。
 最後に、北岡先生の「自然の中のつながり」についての話の紹介がありました。
 終わりに質疑応答があり、今後の猿投の森づくりに非常に参考になる講義となりました。

次回 第18回わいがや講座
11月1日(火) 午後 1:30〜3:30
テーマ:ギフチョウの現状
講 師:猿投の森づくりの会 高橋 匡司 様
  環境省登録 環境カウンセラー・かすがい東部丘陵自然観察会 会長・かすがいギフチョウのすむ里山づくりの会 代表・モニタリング1000 海上の森コアサイト 幹事・名古屋昆虫同好会 幹事・日本鱗翅学会 自然保護委員会東海支部長

場 所:尾張旭市 新池交流館ふらっと


第16回わいがや講座

2016年9月6日(火)

開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 7名
テーマ:「こんな研修に参加しました。」
講 師:猿投の森づくりの会 M.O氏及びS.G氏 

講義の内容
その1
講座名:「間伐してベンチをつくり寄付しよう」
講座は次の通り4回あって、まだ1回目が終わったところです。
1回目 間伐と出材
2回目 製材
3回目 墨入れ・切断・組み立て
4回目 仕上げ
 1回目5月28日、山へ行き、4名ずつ3グループに別れて、径が16〜20cmのヒノキの木をのこで切って間伐をしました。切った木は、秋まで乾燥させたあと、2回目に加工場で製材します。そして、3回目以降、その木を使って自分たちでベンチづくりの全工程を行います。完成させたベンチは公共施設に寄付します。
また、現場に設置してあった移動式のバイオトイレについて説明がありました。


その2
講座名:「森林観察リーダー入門講座」
講座は次の通り8回あって、6回目が終わったところです。
1回目 森林の仕組み
2回目 間伐の必要性
3回目 森林の植物
4回目 東海地方特有の植物
5回目 森で暮らす昆虫
6回目 森林観察会の運営方法
7回目 森林観察会の模擬体験
8回目 模擬森林観察会
 この講座では、森林のしくみと森林に生息する動植物の知識を学びます。
 特に1回目は「森林のしくみ」において植生遷移や階層構造について学び、2回目は「間伐の必要性」において人工林の間伐について学びました。非常に参考になりました。講座では、1回目の「森林しくみ」についてプロジェクタを使いながら説明がありました。

第15回わいがや講座

開催期日:2016年8月2日(火)
開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと
参加者 15名

テーマ:「森林・林業の現況と課題」
講 師:猿投の森づくりの会 S.M 氏
講義の内容
 近年、地球温暖化防止や、身近な生活環境保全等の環境問題から、「森林」に対する関心は高まっている。我が国は森林に恵まれ、その森からの恵みに大きく依存しながら生活し、高い文化を創り上げてきた。その過程では、過度な木材等の利用により、重大な森林疲弊を体験してきたが、先人の努力もあって、今日国内の森林資源は充実しつつある。
 しかし、代替品の進出やグローバル経済の下で、木材の需要構造は大きく変化し、国内の林業生産活動は停滞し、このため森林機能の低下をも招いている。
 木材の生産・流通・加工・消費構造の改革により、持続可能な資源としての森林の有効活用と、その多面的機能の向上を図る必要がある。
 プロジェクターで図表を見ながら以下の内容で詳しい説明のあと、活発な質疑がありました。
・ 森林に対するニーズの変化
・ 森林の多面的機能の評価
・ 森林機能の階層性
・ 世界の森林面積
・ 戦後の人工造林の推移
・ 人工造林の経費
・ 人工林の齢級人工別面積
・ 森林資源の現況
・ 国産材生産量
・ 木材自給の推移
・ 木材の産地別、製品別供給内訳
・ 木材価格の推移
・ 木材価格の差
・ 日欧の木材価格
・ 主要林業国の林業基本指標
・ 林業生産基盤の比較
・ 高性能大型林業機械の導入
・ 住宅建築の動向
・ 木質バイオマスの資源
・ 木質バイオマスの活用
・ 今後の林業経営体制
・ 今後の木材生産・流通・加工・消費

次回 9月6日  1:30〜3:30 「こんな研修に参加しました。」
場所 尾張旭市 新池交流館ふらっと

第14回わいがや講座

2016年7月5日(火)

開催場所:尾張旭市新池交流館ふらっと

参加者 14名

テーマ:「矢田川山口堰堤と瀬戸のSABO

講 師:矢田・庄内川を綺麗にする会 M.M 氏

 前もって頂いていた講師のプロフィールに目を通したときには、その経歴に圧倒されてしまいましたが、当会のOさんの先輩とのことで、また話しを伺うと実に気さくな方で緊張も和らぎました。

 自己紹介のあと、パソコンとプロジェクターを使い地図や写真を見ながら進められました。まず矢田川の水系について説明がありました。瀬戸市街地を流れる瀬戸川は矢田川の支流で、その上流部に水道水源となっている馬ヶ城堰堤がある。本流の矢田川は当地域では山口川と呼ばれ、洪水調整用ゲートと山口川堰堤と呼ばれるダムがある。山口川は瀬戸川と合流し矢田川となる。山口川上流は赤津川となり、猿投山を水源とする。上流に山路の森を流れる支流の山路川がある。山路川から馬ヶ城貯水池に水が無動力で供給されている。

 山口川堰堤に近づこうと試みたが荒れ果てて道は無く行くことができなかったとのこと。写真で見ると、ダムは錆び付いてまったく水利ダムとして機能しておらず、また航空写真によるとダムは堆積土で埋まってしまい草木が生い茂った状態になっていることが分かる。

 当時の瀬戸川の流域は飲料水に乏しく、その水質も概して悪いものであった。山口川上流とその支流に取水堰を設けて分水し、鉄管により馬ガ城貯水池へ導水する瀬戸市の上水道計画が明らかになると、灌漑用水を山口川に頼っている下流農民の猛烈な反対にあった。

 この時期、瀬戸市周辺の林地の荒廃に対して砂防工事が計画されていて、山口川に砂防堰堤が施工されていたが、県はこの砂防堰堤を嵩上げして改築し、治水の目的に加えて下流域の灌漑などの水利を確保するための貯水池建設を計画した。瀬戸市の馬ガ城貯水池を含む上水道敷設工事が完成した昭和8年末になって水利紛争は解決し、12月16日山口川堰堤改築工事が開始され、翌年3月31日堰堤が竣工した。堰堤工事の完成を記念して碑が建立され「興利除害」の文字が刻まれている。山口川堰堤は、利水(農業用水の確保)と洪水調整の目的で建設され、多目的ダムの第1号と位置づけられている。

 

 この地域は江戸末期には岡山(総社市)、滋賀(田上山)と合わせ、森林伐採により花崗岩の風化した日本3大禿げ山の一つであった。明治11年にデ・レーケ、明治38年にホフマンの指導で砂防工事が実施された。ホフマン工事と呼ばれたはげ山の復旧跡が残っている。

 

矢田川の魚道調査の結果、投網とタモ網でアユが採捕された。また、今年新設された魚道の定置網にもアユが入った。しかし堰堤の影響や水質の問題で河川中流域まで遡上するアユは極めて少ない。(矢作川のアユ遡上1000万匹超の7/5付新聞記事があった)

 

 話しを伺って1番印象に残ったことは、いつも山路の森に行くために通っている道路のすぐ近くに、しかしだれも簡単には近づくことができない、わずか3ヶ月半の突貫工事で完成し、かつては満水を貯めていたが堆積土で一杯になり、水利ダムとしての機能を全く維持しなくなった、あたかも廃墟のようなダムが存在するということです。

 

 説明に使われた写真に類似のものをインターネット(Wikipedia、グーグルアース)から参考として引用しました。白黒は当時の様子で、カラーは今の状態です。
山口堰堤 当時 圧縮
山口堰堤 現 圧縮
山口川堰堤     建設当時               現在


 
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